ミニマリスト「本の庭」の本と趣味だけのシンプルライフ

20代ミニマリスト女子の生活と趣味について。モノが溢れていた実家から抜け出して、モノの代わりに趣味を増やしたい。

【書評】柚木麻子著『本屋さんのダイアナ』の少女、彩子はきっと自由研究が苦手な少女だったと思うと親近感が湧いた。

こんにちは。本の庭です。

 

少しご無沙汰してしまいました。

月末の営業マンて忙しいんですね。働き始めて数ヶ月ですが、

最近やっとそう実感し始めているところです。

 

さて、今週も今週のお題に関する本を紹介したいなあと思います。

今週のお題「わたしの自由研究」

ですね。

 

小学生の頃、わたしは夏休みの宿題になる、自由研究というものが苦手でした。

算数とか、国語とかの問題集が宿題として出されるのは嫌じゃなかったけど

自由になんでも研究していいよ、っていうのがすごく苦手。

 

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なんでもいいと言われると、何もできないような子でした。

そう思い返していたら、あの小説に出てくるあの子も、

きっと私と同じように自由研究が苦手だったろうなあと親近感が湧いた少女がいます。

 

それは、

柚木麻子さんの著書『本屋さんのダイアナ』に出てくる少女、彩子(あやこ)。

今日は彩子の話を中心に、『本屋さんのダイアナ』の書評をしていきます。

 

 

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

 

 

 

女心と食事の描写の天才、柚木麻子。

本屋さんのダイアナ』の著者、柚木麻子(ゆずきあさこ)さんは、

おそらく『ランチのアッコちゃん』が一番有名なんじゃないでしょうか。

 

 

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

 

 

アッコちゃんが自分の4人の部下とランチを交換しながら人生相談に乗る、短編集ですね。

柚木麻子さんはとにかく女心と食事を絡めた描写が多い方です、

女心といっても、小学生の少女の描写から、大学生、OLと年齢も幅広いし、

ジャンルも恋愛だけじゃなくて、女友達、家族に対する感情、仕事観とかも。

 

繊細な心情の描写は、女性なら自分のことを見破られているような気がして、

ひやっとしてしまうポイントが必ず見つかるはずです。

男性にとっては、女性の心情を知るヒントになるかもしれませんね。

 

そんな少し自分の傷をえぐられるような感覚と同時に、

食べ物が幾度となく登場します。

本の中からいい匂いがしてきそうなほどの文章の瑞々しさに、

 ほっこりしてしまいます。

 

ランチのアッコちゃんの他にも、食事が出てくる小説は、

『あまからカルテット』『その手をにぎりたい』『BUTTER』とかもありますね。

柚木麻子さんは比較的短編集も多い気がするので、気軽に読みやすいのも特徴です。

 

本屋さんのダイアナ』の感想

そんな柚木麻子さんの書いた『本屋さんのダイアナ』は、

本が好きな小学生、ダイアナ(大穴)と彩子の二人の少女の物語。

 

ダイアナと彩子は正反対の環境で育った少女で、

ダイアナは水商売をしている母親との母子家庭で半ば放置されながら育ち、

彩子はお金持ちの家庭で優しい父母に大切に育てられています。

 

共通点は本が好きなことで、『赤毛のアン』をきっかけに仲良くなった二人の

小学生から大学生までの人生を描いた物語です。

 

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私の呪いを解けるのは、私だけーーー。

私が一番好きな言葉です。

 

私の呪いを解けるのは、私だけーーー。Amazon.co.jp: 本屋さんのダイアナ: 柚木 麻子: 本 

 

ダイアナと彩子はそれぞれ自分に呪いをかけてしまっているんです。

 

ダイアナは、

水商売をする母親のガサツな性格、金髪の髪の毛、大穴という名前に。

 

そして彩子は、

親の言うことから脱線することができない真面目さ、周囲からの期待、誰にも理解されない虚無感に。

 

それぞれの呪いに苦しみながら、成長していき、

喧嘩別れしたり、自分を正当化するために間違った道を進んだりしながらも

少しずつお互いを支えに成長し、自分の呪いを自分で解こうともがく。

 

そんな話です。

 

彩子はきっと自由研究が苦手な少女だったと思う。

読む人によって、どちらの少女に親近感が湧くかは異なってきます。

 

もちろんどちらにも共感できるポイントはたくさんありますが、

私は彩子に自分を重ねて苦しくなるほど、

彩子への共感ポイントが多かったです。

 

そして彩子はきっと私と同じ、自由に研究しろと言われるのが

苦手だった少女だと思います。

 

彩子は、恵まれた環境で育ついわゆる「優等生」。

「いい子」なんです。

 

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自分で言うのもなんですが、私も「いい子」だと言われてきました。

家庭環境や友情関係、完全に彩子と一致しているわけではないですが、

この感じすごくわかるなあと。

 

 

でも、いい子って言われるのって、ある時からとっても苦しくなったりしますよね。

誰かに「いい子」と言われることをしなければならない、

そうやって期待に答え続けていると、

だんだん周囲の思っている正解を当てに行くようになるんです。

 

自由研究の宿題がだされて、

自由に研究していいよ!と言われても、必ずそこに正解があると思ってしまう。

 

先生が求めている「子供らしい好奇心の探求」は何か。

 

それに当てはまるような研究をしなければ。

 

彩子にとって、国語とか算数の問題集をやるより難しい問題なんだと思います。

 

 

自由と責任は表裏一体

彩子はそうやって、真面目に優しい両親と期待する先生の言うことを聞いてきました。

きっと自由ではなかったけど、いい子だから失敗もないし、

失敗もないから責任もなかった。

 

でも、大学生になって、徐々に両親から自立して行って、

少しずつ自由が増えていく。

自分で決断することが増えて、人の悪意と善意を判断できなくて、

他人に傷つけられてしまいます。

自分で決断する自由が増えた代わりに、自分で責任を取らなければいけない。

 

こんなこと、両親は教えてくれなかった。

初めて「間違い」を犯してしまって、その責任を誰かに押し付けたいけど、

それもできない。

誰にも相談できずに、間違いを無かったことにするために、

間違った道へ突き進んでしまうんです。

 

自由と責任って常に表裏一体だなあとこの本を読んで改めて思います。

 

自由に生きるためには、自分の決断したことに対して、責任を取らなければならない。

 

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自由であるためには、

人の悪意から身を守る強さと賢さも身につけないとダメだし、

無知が故に傷つけられても、

誰のせいにもできず、泣き寝入りしないといけない時もある。

 

そんな少女の葛藤に胸が締め付けられるような思いでした。

 

ただの2人の友情物語ではない、成長物語でもない、

自由と責任について深く深く考えさせられる一冊でした。

 

 

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)